私の実家には跡取りがいません。
私と姉の二人姉妹で、二人とも長男に嫁ぎ、家を出ました。
とは言え、私も姉も実家と同じ市内に住み、様子を見に行くことは出来る距離で
生活しています。
父が前立腺がんを患ってから、がんがリンパに転移し薬の副作用とともに体調の
浮き沈みがあります。その変化を見逃すまいと日々傍で看てきた気丈な母。
数ケ月前、お昼ごろに眠るように意識を失った父。
慌てた母は救急車を呼び、それまで必死の心臓マッサージを行いました。
そのおかげで一命を取り留めた父は、こちらの世界へ無事戻ってきました。
恐るべし我が父・・と笑い合えたことは本当に幸せなことです。
しかし、この一件で母の様子が変わりました。不安に憑りつかれた・・
というべきでしょうか。心配をした私達はこの不安を解消したいと思いました。
不安の原因を一緒に紐解いていくことが大切
その夜は久々に実家に泊まり、母とゆっくり話をしました。
「夫の死」を直接体感した母は、一体何が不安なのか・・ということも
具体的に私達に伝えられないようでした。当然かもしれせん。
ただ、緊急時には正しい対応できるという自信が持てたこともあり、
「夫の死」については覚悟は出来ているように思いました。
とすれば、母の頭をよぎっているのは、父の死後の不安という事になります。
責任感の強い母に考えられることは下記の点です。
①お金の不安
②自分が病気や老衰で自立できなくなった時の不安
③その他
紐解いていくと、一番の不安はなんと③のその他だということが分かりました。
お金はきちんと預金をしていたし、自立できない時は私達が居るので施設の手配もできます。
不安の原因は「お墓のこと」だったのです。
不安なのは自分たちのお墓がないということ
実家は新宅で代々のお墓がありません。両親が一代目となるわけです。
自分が元気な時に家の整理をして不要なものは捨てておくということは
母も終活の始まりとして心がけていましたが、お葬式やお墓のことについては、
父の死を早めてしまうようで”縁起が悪い”と思い込み、相談もできなかったのでは
ないでしょうか。紐解けた私達は少しほっとしました。
これで解決に向かうべき具体的な話が出来るわけですから。
母は言いました。
「お墓はいらない。でも、自分たちが死んだ後どうなるのか。
納まるところが分からないのは落ち着かないのよ・・。」
自分達に合ったお墓を選べる時代
後々、私達の手を煩わしたくないということで、「お墓(墓石)はいらない」と
以前から言っていたので、「室内墓」があるという近所のお寺に向いました。
本堂の中に入ると線香の香りに包まれ、その中の小部屋に「室内墓」がありました。
イメージは扉のついたロッカーに表札がついているという感じですが、軽微という印象では
ありません。扉を開けるとその中に、ご家族の位牌や遺骨が入っているようです。
もちろん、いつでも手を合わせに行くこともできます。
更に私達が反対しない限りは30年経つとお寺で永代供養をしてくれるというのです。
すっかりその場所が気に入った母は数日後、父と一緒に予約を入れたそうです。
価格は一人50万円。夫婦二人で100万円。
墓地を購入するよりお安く安心が買えたというべきかもしれません。
まとめ
近頃よく耳にする「終活」とは、残った者が困らないようにという思いから、
元気なうちに身の回りを整理すること・・だと思いますが、
何よりも自分の心が安らかになるためのものなのかもしれません。